残っている歯が多くなったからこそ増えた病気:歯根破折

80歳で20本以上の歯が残っている人(8020達成者)は、直近のデータで6割を超えています。自分自身の歯で噛めることは健康にとってとても大切なことなので、この数字は喜ばしいことです。一方、歯が長く残るようになったからこそ、増えた病気があります。そのひとつが「歯根破折」です。

歯根破折(しこんはせつ)とは、歯の“根っこ”の部分にヒビが入ったり、割れてしまったりした状態のことです。
口の中に見える歯の頭の部分ではなく、歯ぐきの中や骨の中にある根が割れるため、患者さんご自身では気づきにくいです。

歯根破折は、特に次のような歯で起こりやすいと言われています。

・過去に神経の治療(根の治療)を受けた歯
・大きな被せ物が入っている歯
・歯ぎしり・食いしばりの癖がある
・硬いものが好き

神経を取った歯は、血流がなくなることで歯がもろくなりやすいです。そこへ強い力が加わることでヒビが入りやすくなります。

歯根破折の症状として、

・噛むと痛い
・押すと違和感がある
・歯ぐきが腫れる、歯茎にニキビのようなできものがある
・何度も同じ歯が腫れる
・治療した歯に、また痛みや違和感が出た

などが挙げられます。

これらの症状がある場合、レントゲンなどの検査を行い、歯根破折の有無を調べます。

歯の根が割れると、その割れ目から細菌が入り込みます。その結果、歯を支える骨や歯ぐきに炎症(腫れや痛み)を起こします。菌が入ったところをよく洗ったり抗菌薬を飲んだりして一時的に症状を抑えることはできますが、割れ目がある限り、細菌の侵入を防ぐことはできません。そのため、痛みや腫れを繰り返してしまいます。

歯根破折の治療は、割れ方や位置によって対応が異なりますが、割れ目が歯の深いところまで及んでいる場合は、抜歯が必要になることが多いです。ごく浅いヒビの場合は、状態によっては歯を残せるケースもあります。
できるだけ歯を残したい、という気持ちはとても大切ですが、歯根破折によって炎症を繰り返している場合には、周りの歯の状態まで悪くしてしまうことがあります。したがって、その歯を残すことのメリットとデメリットを考えながら、治療方針を決める必要があります。

完全に防ぐことは難しいですが、リスクを下げることはできます。

・歯ぎしりや食いしばりがある方はマウスピースを使用する
・被せ物の高さや噛み合わせを適切に調整する。
・硬いものを無理に噛まない。
・定期検診で早めに異変を見つける。

などが対策になります。

歯根破折は、見た目では分かりにくく、気づいたときには症状が進んでいることも少なくありません。
治療した歯がまた痛くなってきた、何度も同じところが腫れる…そんな時は早めにご相談ください。