このコラムを書いている私が「激痛」で思い出すのは、24歳で親知らずを抜いた翌日のことです。顔が腫れて四角くなり、体を起こすだけでも涙が出るほど痛かったことを覚えています。私の場合はたまたま激痛の経験が歯の痛みでしたが、調べてみると、三大激痛とされる病気があるのだそうです。一番よく挙げられるのは、尿路結石、痛風、心筋梗塞です。この組み合わせはいろいろで、三大激痛に「歯痛」が含まれることもあるようです。ただし、ここで言う歯痛は、私が経験した親知らずを抜いた後の痛みではありません。
三大激痛に分類される歯痛とは?
原因① 歯髄炎
虫歯が深い所まで進み、歯の内部にある歯髄(神経と血管の集まり)に菌が感染して炎症を起こした状態です。炎症は歯の中で起こります。
原因➁ 根尖性歯周炎
菌が根の先まで入り込み炎症を起こした状態です。この場合は炎症が骨の中で起こっています。
歯の構造について
口の中に見える歯の頭部分を歯冠と言います。歯冠は三層構造です。
・エナメル質:体のどの組織よりも硬い。一番外側の層。
・象牙質:エナメル質を裏打ちする硬い層。痛みを感じる。
・歯髄:エナメル質と象牙質からなる硬組織の内側にある、歯の神経と血管の集まり。
また、歯冠の下に伸びる歯根は骨に支えられています。
なぜ歯髄炎や根尖性歯周炎が激痛なのか?
炎症とは
ふたつの病気に共通するのは「炎症」です。そもそも炎症とは、細菌やウイルスの感染、様々な刺激などによって組織が損傷した際に、異物を除去し組織を修復しようとする生体防御反応と定義されます。生体防御反応のためには白血球などの免疫細胞が必要です。また、細胞が活発にはたらくために栄養や酸素が必要です。そして細胞、栄養、酸素が運ばれてくるためには、炎症の部位では血管が広がって血流が豊富になる必要があります。このように血流が豊富になる結果、炎症の部位では、痛みのほかに、赤み、熱感、腫れが起こるのです。これらを炎症の4兆候と呼びます。
これを踏まえてふたつの病気を考えてみましょう。
歯髄炎では何が起こっている?
歯髄は神経と血管の集まりなので、炎症が起きると体の他の部位と同じく血流が豊富になります。一方で体の他の部位と大きく異なるのが、歯髄は硬い組織に囲まれているということです。血流が豊富になって腫れる状況なのに、周りを硬いエナメル質と象牙質に囲まれていて、それ以上の逃げ場がありません。
血管の腫れを外に逃がすことができない結果、一緒に存在する神経を強く圧迫してしまい、激痛に繋がります。
根尖性歯周炎では何が起こっている?
根尖性歯周炎の場合は、炎症を取り囲む硬い組織は骨です。根の先で起きた炎症ははじめ骨の中にあります。歯髄炎と同じく、硬い骨の中では逃げ道がないため、周囲の神経を圧迫し激痛につながります。歯髄炎における硬い歯と少し違うのは、骨は炎症で溶ける(骨吸収)ということです。根の先に入ってきた細菌から距離を取ろうと、体が自分で骨を溶かしていくのです。さらに、骨に穴(瘻孔)をあけることもあります。瘻孔ができると、炎症の腫れの抜け道になるため、痛みはある程度引くことが多いです。
私たちはよく、根の先の骨吸収を「レントゲンで黒い影が写っています」、骨にあいた穴を「にきびのような腫れ」「膿の出口」と説明しています。
歯の痛みは夜間痛も特徴
歯髄炎や根尖性歯周炎に限りませんが、歯や顎の痛みは夜寝るときに悪化することがあります。これも体の構造から説明ができます。夜、布団で横になると、頭の位置が低くなるために歯や顎の血流が増えて、神経がさらに圧迫されるため痛みが強くなる、というメカニズムです。
結びに
歯の痛みは三大激痛とも言われるほど辛いものです。
我慢せずぜひ早めに受診してください。